日本歯科評論8月号
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1₁ わが国の総人口(2022年■月15日現在推計)は,前年に比べ82万人減少している.一方,65歳以上の高齢者人口は3,627万人と,前年(3,621万人)に比べ■万人増加し,高齢化率は29.1%と前年(28.8%)に比べ上昇し,過去最高となった■). 高齢者人口を詳しくみると,70歳以上人口は2,872万人(総人口の23.0%)で,前年に比べ39万人増,75歳以上人口は1,937万人(同15.5%)で,前年に比べ72万人増,80歳以上人口は1,235万人(同9.9%)で,前年に比べ41万人増となった.なお,75歳以上人口は,総人口に占める割合が初めて15%を超えた.これは,いわゆる「団塊の世代」(1947年〜1949年生まれ)が2022年から75歳を迎え始めたことによると考えられる(図1). この人口の超高齢化に対応するためには,健康長寿社会の達成が必須となる.健康長寿とは,いわゆる健康寿命と平均寿命の乖離が可及的に少なくなった段階であり,2016年の平均寿命と健康寿命の差は男性8.84年,女性12.35年である.この乖離を少なくするためには,いわゆる脳血管障害や糖尿病などの生活習慣病の予防や,フレイル対策を行わなければならない.生活習慣病の予防には高齢期になる前から取り組んでおかなければならないが,フレイル予防は高齢期になってからが特に重要である. 年齢による介護度の進行程度(図2・図3)によれば■),男性の10.9%(図2・緑線)は死ぬ直前まで介護は不要で,元気な状態を保っているという.いわゆる“ピンピンコロリ”である.19.0%(図2・赤線)は,60歳台で脳卒中など介護度を上げる病気を患ってしまい,要介護状態になり,そのまま死亡する.残りの約70.1%(図2・青線)は,70歳を超えたところから徐々に自立度が低下してゆき,要介護状態に突入する. 女性の場合は,12.1%(図3・青線)が,男性と同様に脳卒中等のイベントにより自立度が急激に低下するが,87.9%(図3・赤線)は,70歳を超えたところから徐々に自立度が低下し,要介護状態になると報告されている■). 要介護状態をできるだけ短くするためには,脳卒28 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.8(2023-8)東京医科歯科大学大学院 老化制御学講座 高齢者歯科学分野 教授〒113-8549 東京都文京区湯島1-5-45PartⅠ 口腔機能低下を改めて考える社会的背景と対応の必要性特別企画口腔機能低下への対応―予防から看取りまで水口俊介「口腔機能低下症」の発生から誕生そして…

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