日本歯科評論6月号
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景かげ山やま正まさ登と日本歯科評論(通刊第968号) 85 本稿では,平滑面う蝕の検査に基づく診断と治療のフローチャートについて症例を通して説明する.平滑面う蝕は歯頸部う蝕が大半を占めるが,下顎大臼歯頰側面に存在することが多い頰面小窩にう蝕が認められることがある.さらに,歯頸部う蝕の場合はプラークが除去しやすい環境なので,プラークが除去できればエナメル質う蝕だけでなく象牙質う蝕でも進行を停止することができる.そのため,フローチャートに沿って,どのように検査,診断,治療を行うか,症例に基づき解説する. 平滑面う蝕は,前述したように唇頰側面および舌口蓋側面に存在するう蝕で,目視しやすい.特に,唇頰側面は直接見ることができ,プラークコントロールなどの対応もしやすい.したがって,う蝕病変があったとしても進行の停止や回復を図ることが可能になる.しかし,大臼歯などで頰側面に頰面小窩が存在することがあるので,その場合は後述するが注意深く検査を行わなければならない. プラーク除去後に,う窩の有無を直接確認する.う窩が認められるならば,X線写真検査で透過像の位置を確認する.しかし平滑面の場合,透過像が不明瞭なときもある.透過像または目視で,病変が象牙質に及んでいたら,象牙質内病変であるので,活動性象牙質う窩病変と診断する.このとき,病変にプラークが付着しているかどうか確認することも重要である.たとえば,来院するたびにプラークが除去されず付着し続けているならば,病変の進行は停止しないので,治療としてレジン充塡などの保存修復治療を選択する(図40-a). 平滑面う窩の症例を提示する(図40-b~e).メインテナンス来院時26歳男性の4頰側歯頸部.プラークを除去し乾燥すると,う窩と周辺に白斑病変が認められる(図40-b).X線写真で透過像は不明瞭であった(図40-c).しかし,目視でう窩は象牙景山歯科医院〒164-0011 東京都中野区中央 2-59-11▶平滑面にう窩があるときの検査に基づく診断と治療の流れ――保存修復治療の場合(図40-a)歯冠う蝕の検査に基づく診断と治療のフローチャート――フローチャート作成の根拠と実際の活用法4.平滑面う蝕があるときの検査に基づく診断と治療(完)

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