日本歯科評論6月号
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椋むくのき 由ゆ理り子こ 本稿ではケースとして意外と悩まれている方が多い歯間離開を取り上げたい.歯間離開の閉鎖を目的とした治療法はさまざまで,矯正治療,コンポジットレジン修復,ラミネートベニア修復,もしくはそれらを複合的に行う治療方法があるが,患者の審美的な要求のレベルや治療期間,費用の希望,自院の臨床スタイルなど,いろいろな条件によって選択される.そんな中,短期間での治療を希望し,また,天然歯の保存を強く希望する患者は少なくない.その場合はミニマムインターベンションの概念に基づき,コンポジットレジン修復がしばしば用いられている. 平均■年の観察期間で,コンポジットレジン修復での正中閉鎖は,93%と非常に高い成功率を示している■). しかし,修復の特性上,天然歯の位置関係によってその審美的限界が存在することも忘れてはならず,歯間離開量や歯の唇舌的位置,歯軸の捩れなど確認事項は多い.その際にコンポジットレジン修復の前処置として数カ月の限局的矯正歯科治療(Limited Orthodontic Treatment,以下LOT)を₁むくのき歯科医院〒753-0044 山口県山口市鰐石町5-20₂徳島大学大学院医歯薬学研究部再生歯科治療学分野〒770-8503 徳島市蔵本町3-18-15₁,₂ 保ほ坂さか啓けい一いち₂日本歯科評論(通刊第968号) 77 審美的に歯冠形態を改善したい,でも健全歯質は出来る限り保存したい.この■つを両立させることは従来の間接修復中心の治療ではなかなか困難であった.しかし,接着技術が向上した現在,天然歯のエナメル質を保存した状態でコンポジットレジン修復を行うことで,短時間で患者負担の少ない審美改善が可能となってきている. コンポジットレジン修復は元来,比較的小規模なう■に対する治療に用いられ,天然歯への復元を目標にしてきた.しかしながら現在では接着材料の進化と充塡材料の改良により,直接法の接着強度は間接法の接着強度よりもはるかに高いことが知られ,長期臨床成績でも高い生存率が示されている■).口腔内で自由に成形でき,歯質と結合し一体化する特徴を持つコンポジットレジン修復は,患者が望む歯冠形態や色調への修正と目標が変化し,その適応は確実に拡大している.はじめに正中離開に対する矯正治療とコンポジットレジン修復治療とのコンビネーション治療――₇年経過長期症例Directly closed midline diastema using a resin composite with limited orthodontic treatment; A 7-year case reportcase presentation

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