日本歯科評論6月号
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寺てら岡おか 寛ひろし<略語一覧>VPT:歯髄保存療法CH:水酸化カルシウムIDPC:間接覆髄法DPC:直接覆髄法P.P:部分断髄F.P:歯頸部断髄CR:コンポジットレジン<補足>日本歯科評論(通刊第968号) 49注 ■:筆者が自身で使用している用語:複根管歯で任意の根管は抜髄,他の根管を断髄した抜髄と断髄のコンビネーションを「部分抜髄−部分断髄法」と呼んでいる.注 ■:筆者の成功の定義:患者に不快症状はなく,臨床検査で異常反応なし.X線写真でも根尖透過像が存在しない,もしくは一時期には存在したが予後観察中に消失したもので,上記のすべてを満たしているもの. 前回はVPTの科学としてVPTの歴史や特性,断髄法の成功率,術式,さまざまな基準を示した.今回は処置中の画像と共に興味深かった断髄法の臨床を中心に供覧したい. 本項では,筆者が行った①断髄の中期経過症例,②間接覆髄の失敗症例,③不可逆性歯髄炎の症状を示す歯の歯頸部断髄,④断髄後に透過像が生じた症例の予後観察,⑤残せない歯髄の一例,⑥出血のコントロールができなかったが断髄を行った症例,⑦疼痛のコントロールが困難で術中に髄腔内麻酔を行った症例,⑧断髄後に強度の打診痛が生じたがリカバリーした症例,⑨バイオセラミック材料で覆髄した症例,⑩術前の検査では断髄の適応と思われたが術中の判断で抜髄をした症例,⑪歯髄の血流があるように見えたが歯髄を切断したところ歯髄壊死していることがわかった症例,⑫部分抜髄−部分断髄法を用いた術式,⑬侵襲性歯頸部吸収を思わせる歯に断髄法を応用した症例を供覧させていただく. すべての症例の予後観察で患者に症状はなく,臨床所見に異常な所見もない.なお,筆者は生活歯髄検査時と予後観察時には必ず打診・触診・歯周ポケットの測定を行い,予後判断の一助としている.処置に関しても「Ⅴ.術式」の項に記載したように,まずは辺縁のう■を一層除去して隔壁を作成し,ラバーダムを装着後,ラバーダムシートを消毒して行っている.また,筆者は術前・術後・予後観察時のデンタルX線写真は正放線投影と偏心投影の■枚で評価をしているが,紙幅の都合上,割愛している症例もある.フリーランサーⅨ.症  例失敗のリカバリーと応用法Vital Pulp Therapy―歯髄を可及的に保存するアプローチ―₂.臨床編:断髄法の実際─中期経過症例,

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