日本歯科評論6月号
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東ひがし堀ほり紀のり尚ひさ 物体を移動させる際に作用させた力には,必ずその力と反対方向に同じ力が生じる(作用反作用の法則).矯正歯科治療においての歯の移動にも作用反作用の法則を認め,たとえば,挺出している歯に圧下力を加えた場合,必ずその隣在歯には反作用である挺出力が生じる.治療内容によっては,この反作用は望ましくない歯の動きを生じさせる場合があり,矯正歯科治療では「反作用に抵抗する力=固定」をどのようにコントロールするかが治療結果に影響を与える重要な要素の■つである.従来,固定を強化する目的として舌側弧線装置・トランスパラタルバー・ヘッドギア等を用いているが,これらの装置では絶対的な固定を達成することができないため,歯の移動を十分に達成できない場合や,固定源に好ましくない変化を生じさせる場合がある(固定の喪失).一方,固定の喪失を伴わない,いわゆる「絶対的固定源」が実現可能な歯科矯正用アンカースクリュー(以下,アンカースクリュー)では,矯正力による反作用を最小限に抑えることが可能となり,その利用価値は高く,近年日常臨床において頻繁に使用されている. アンカースクリューの適応症は,従来達成する事が出来なかった絶対的固定源を必要とする症例,たとえば臼歯を近心移動させず前歯部を遠心へ移動させる症例,大臼歯の圧下,遠心移動を必要とする症例,歯列全体の遠心移動を必日本歯科評論(通刊第968号) 37東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面頸部機能再建学講座 顎顔面矯正学分野 講師 〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療の概説知っておきたい歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療の基本の「き」2

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