日本歯科評論6月号
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森もり山やま啓けい司じ1径 矯正治療は,力学的刺激(矯正力)によって歯周組織や顎骨のリモデリングを賦活化することにより,歯の移動や顎成長コントロールを行い,個性正常咬合を確立することで,患者の心身の健康増進を図り,QOL向上を目指す歯科臨床の一分野である.近年,矯正治療を希望する患者は増加傾向にあり,その対象は成長期の児童,生徒のみならず,若年から中高年にかけて幅広い年齢層へと広がりつつある.また,顎顔面先天異常,顎変形症,顎関節症,歯周病等,さまざまな疾患や障害を抱えた患者の来院も増加しており,多様な症例への対応が求められるようになってきている. 歯科矯正用アンカースクリュー(以下,アンカースクリュー)は,矯正治療における歯の移動の固定源として開発された歯槽骨あるいは顎骨に埋入・植立されるスクリュー形状の歯科用デバイスの総称である(図1).通常は歯槽骨あるいは顎骨に単体で植立され,粘膜を貫通し口腔内に露出したスクリュー頭部が矯正力の固定源となる.骨に固定源を求めることで,歯の移動の自由度が拡大されることから,矯正治療のみならず,包括的歯科治療において利用される機会も増加している. そこで本特別企画では,アンカースクリュー矯正治療に造詣26 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.6(2023-6)図1 歯科矯正用アンカースクリューの構造.ネジ山東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面頸部機能再建学講座 顎顔面矯正学分野 教授 〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45頭部頚部長さ体部先端部はじめにアンカースクリュー矯正治療の現在

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