日本歯科評論11月号
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吉よし沼ぬま直なお人と 薬物性歯肉増殖症(drug-induced gingival overgrowth/drug-induced gingival hyperplasia:以下,DIGOあるいはDIGH)は,薬剤の服用に伴って現れる歯肉増殖(gingival overgrowth:以下,GO)である.抗てんかん剤であるフェニトイン,高血圧症,狭心症などに用いられるカルシウム拮抗剤(calcium channel blocker:以下,CCBs)のニフェジピン,免疫抑制剤であるシクロスポリンなどの服用により歯肉が増殖する■). 日本は超高齢社会を迎え,CCBsを服用している高血圧症患者は増加している.てんかんは過去には小児の病気と考えられていたが,2000年頃から発症率では高齢者が小児を上回るとする報告が増えてきている■).免疫抑制剤のシクロスポリンは,当初は腎臓や肝臓などの臓器移植の拒絶反応を抑制するために処方されたが,現在は乾癬やアトピー性皮膚炎などに適用範囲が拡大されている. 今日,全身疾患の治療目的で患者にはさまざまな日本大学歯学部 歯科保存学第Ⅲ講座〒101-8310 東京都千代田区神田駿河台1-8-13薬剤が処方されている.このような現状の中で歯科領域では,薬剤の服用によるDIGOに対応する機会が増加していくものと思われる.患者はそのような口腔状況に驚き,不安に感じる.そのような患者に対して,適切に説明・対応できる知識が臨床現場に求められている.本稿では本誌2015年■月号において紹介した情報のアップデートとして,DIGOの原因となる薬剤や臨床対応および保険診療における注意点などを解説する. DIGOの発症率に関してはフェニトインによるものは約50%,CCBsによるものは約20%,シクロスポリンによるものは約30%で■),臨床的にこれらの薬剤の服用後,■カ月頃からGOが発症することが多いといわれている■). Hatahiraら■)は日本医薬品副作用データベースからの2004年■月から2016年11月までの薬剤の有害事象(adverse event)中のDIGH発症件数を分析した.この報告は薬剤の有害事象の報告総数中の日本歯科評論(通刊第961号) 87超高齢社会だからこそ知っておきたい薬物性歯肉増殖症への対応

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