日本歯科評論11月号
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小こ西にし浩こう介すけ 「上減の歯列」において上顎前歯部が残存した症例の補綴設計は,残存歯や咬合の状態,患者のライフステージを考慮するため多種多様である.筆者はその補綴設計の選択肢であるコーヌスクローネをはじめとするテレスコープデンチャーでの対応について述べたい. 前項の飯田先生の論文にあるとおり,宮地先生は上顎前歯部のみ残存する場合,■つの臨床的対応を述べている.■つは前歯部をブリッジタイプで一次固定し,臼歯部を有床義歯で補綴する方法である.もう■つは,コーヌスクローネのような前歯部を含む一塊の可撤式補綴装置で対応する方法である.前歯部の状態が良好であれば一次固定という選択肢も勘案するが,前歯部の状態が良好である症例は決して多くはない.一次固定を選択したとしても,残存歯の予後の不安が尽きないのは臨床医として共通すこのは歯科クリニック〒113-0001 東京都文京区白山1-33-27 ₁Fる悩みではないだろうか.そのため筆者は,一次固定のリスクを患者に説明し同意が得られた場合,二次固定であるコーヌスクローネをはじめとするテレスコープデンチャーで対応している. まずはコーヌスクローネの適応症例を整理したい.図₁にコーヌスクローネを考案したK. H. Körberが述べている適応症例を示す.コーヌスクローネの適応症例は幅広く,代表的な症例としては,中間歯欠損症例と遊離端欠損症例が挙げられる. 上顎の前歯部が残存する症例は遊離端欠損症例であることから,コーヌスクローネが適応である.ただし,この場合の遊離端欠損とは,欠損部側の最遠心の歯の負担を考慮して長い遊離端欠損の場合に限局されている.加えてK. H. Körberは歯列のみに注目した適応範囲ではなく,適応条件を満たす必要があることを述べている.その適応条件として,歯列内に可及的に多くの歯が残存していること,支台歯の歯周組織が健全であることは重要なポイントである.54 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.11(2022-11)「上減の歯列」に対する臨床対応「上減の歯列」に対する各種テレスコープ義歯での対応

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