日本歯科評論11月号
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飯いい田だ雄ゆう太た 歯が■歯でも欠損すると,そこから徐々に欠損は拡大し,最終的には無歯顎へと進行していく.つまり,欠損歯列は徐々に進行していく病態であると捉えるべきだ.患者が初診で来院した時,欠損歯列が現在どの段階まで進行しているのか,そして将来どのような欠損形態になるのか,ということを考えるべきである.また,欠損の進行速度は欠損歯列の状況によりまちまちであるが,時には急激に欠損が進行してしまう場合もある. 前項の亀田先生の論文で述べられているように,下顎よりも上顎の歯が多く欠損していった場合,かなりのスピードで上顎が無歯顎の方向へ進行してしまう場合がある.このような上顎が下顎に先行する欠損を宮地建夫先生は「上減の歯列」と名付け,この徴候が見られた場合,手遅れとなる前に早期の介入の必要性を示唆している■).欠損歯列がどのような流れで進行していくのかという未来予測を,過去,そして現在から読みとっていくことは,われわれ歯科医師にとって重要なスキルとなる.上減の歯列を知るためには,まず「欠損歯列を評価する」スキル飯田歯科本院〒717-0013 岡山県真庭市勝山243を身に付ける必要がある. 筆者は大学を卒業後,東京歯科大学同窓会が主催する卒後研修会に所属・参加し,宮地先生の下で欠損歯列について指導を受けてきた.今回,その経験から欠損歯列の評価法についてまとめてみたい. 筆者は日常臨床において,「欠損歯列」と「欠損補綴」を分けて考えるようにしている.混同しやすい用語ではあるが,欠損歯列とは「欠損のある歯列の状況を読む」ことであり,欠損補綴とは「その欠損歯列に対してどのようにアプローチするか」ということである.つまり,欠損歯列は「診断」,欠損補綴は「治療計画」である. たとえば歯周治療を考えてみる.歯周治療を行う際,歯周組織検査やデンタルエックス線検査,また歯肉の状態を評価して現在の歯周病の状態を診断する.そして,それに対してどのようにアプローチするか治療計画を立案したうえで治療に臨むといった,34 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.11(2022-11)欠損歯列の評価から「上減の歯列」への対応を考える

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