日本歯科評論11月号
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亀かめ田だ行ゆき雄お 日本は超高齢社会となり,人生100年時代と言われるようになった.しかし,高齢者では加齢とともに口腔内の状態も悪化し,歯を失い欠損が拡大することも多い.特に臼歯部の咬合支持を失うと遊離端欠損となり,欠損が拡大しやすくなる.臨床において治療介入を行っても欠損の拡大を止めることができず,やがて多数歯欠損から無歯顎となってしまう咬合崩壊症例を経験する.特に欠損拡大を食い止めようと治療介入しても奏功せず,やがて欠損が拡大してしまう症例は,下顎よりも上顎に多いと感じる.そのような症例では,上顎の臼歯部が先に失われ,上顎の残存歯数がより少なくなり,上下顎の残存歯数の差が開き,臼歯部の欠損がやがて前歯群に拡大,そして上顎無歯顎のシングルデンチャーとなる独特な欠損拡大のコースがある. 宮地建夫先生は,このような下顎歯に先行して上顎歯が失われてしまうコースをたどる症例を「上減の歯列」と呼び,その対応法についても解説している■).そして,上減の歯列症例は以下のような特徴を有すると言われる■).・上顎臼歯部の欠損が前歯部に急激に拡大.・年齢的には50代が多い.・上下の歯数の差が■歯以上.・ 上下歯数の差が大きくなると喪失速度を増し,急激に変化する傾向. 上減の歯列の最終形である上顎シングルデンチャーについては,筆者が本誌2018年■月号にて報告した.シングルデンチャーとは,片顎が無歯顎で対顎に残存歯がある状態で,上下顎無歯顎になる前の段階である.その際に提示したが,歯科疾患実態調査のデータを分析すると,下顎のシングルデンチャーに比べ,上顎のシングルデンチャーの割合が多い■).つまり,下顎よりも上顎のほうが先に無歯顎となってしまう症例が多いということになる.臨床において下顎よりも上顎のほうが欠損スピードが速いということである.医療法人D&Hかめだ歯科医院〒332-0015 埼玉県川口市川口4-2-41-10130 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.11(2022-11)Introductionなぜ今,「上減の歯列」に注目するのか?

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