日本歯科評論11月号
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関せき崎ざき和かず夫お 「8020達成者に反対咬合はいない!」こんなセンセーショナルな報告が発表された.茂木悦子先生らの研究■,■)によると,8020達成者500名以上を調べたところ,反対咬合者はいなかったという.とすれば,反対咬合者のほとんどは80歳で残存歯が20本以下で,歯の喪失数が正常咬合者より多いと想像される.歯の喪失数が多いほど,認知症,心血管疾患,脳卒中リスクは比例増加し■),QOL(Quality of life)は下がる■)というのは周知の事実である.すなわち,反対咬合者は正常咬合者より健康寿命が短いという推論が成り立つ(図1〜図3). 以上の推論を結果から原因に遡って考えれば,「もし成長発育期に反対咬合を矯正し,正常咬合にしておけば,高齢期には歯牙喪失が少なくなり,認知症,心血管疾患,脳卒中リスクも減少し,健康寿命が延伸する」という仮説が成り立つのかもしれない.しかし,この仮説を検証するにも乳歯列完成期関崎歯科医院〒954-0111 新潟県見附市今町5-17-18の幼少期から死亡するまで,100年単位の検証が必要であり,誰一人それを検証または実証した研究者はいない.筆者が所属する小児歯科医,矯正歯科医,一般歯科医が咬合誘導を学ぶ勉強会・町田塾では,これらの仮説は100年後には証明されているだろうと信じ,反対咬合をはじめ,不正咬合や口腔機能発達不全症などの早期治療に取り組んでいる■). 早期反対咬合治療を行うかどうかの診断は大変難しく,多くの考えが存在する.また,2020年に日本矯正歯科学会編「矯正歯科治療の診療ガイドライン 成長期の骨格性下顎前突編」■)が発表された.本連載の筆者らはそれらも考慮し,できるだけ失敗の少ない早期反対咬合治療を行うため,診断力の向上に努めている.今回の連載では,成功症例だけにとどまらず,現時点ではうまくいっているように見えても,今後の経過が危ぶまれる症例も提示している.これらの発表を他山の石として,少しでも皆様のお役に立てば幸いである.62 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.11(2022-11)Ⅰ 早期反対咬合治療の意義連載 ■ 早期反対咬合への対応─その意義と注意点①早期反対咬合治療の意義と注意点

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