日本歯科評論9月号
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い,患者さんにとっては邪魔にならず,口腔周囲組織と調和することによって口腔機能を十分に引き出せる義歯になります(図₁・図₂).鈴き木邦治日本歯科評論(通刊第959号) 115 私は大学卒業以来,総義歯治療には困り果て,いろいろと勉強しましたが,加藤武彦先生の著書『治療用義歯を応用した総義歯の臨床』(医歯薬出版)を読み感銘を受け,大阪での講演や名古屋で行われた技工士会の勉強会に参加し学んできました.もっとデンチャースペース義歯理論を学びたくなり,加藤先生に次はどこで講演されますかと質問し,「次は松本歯科大学で,その次は神奈川の技工所で実習をやるから」とうかがい,足を伸ばしました.何度目か加藤先生の講演会に参加をさせていただいた時に,「もし真剣に勉強したいなら,一度お前さんの診療室に行って患者さんを見てあげる,横で見るのが一番の勉強になるぞ」と言ってくださり,当院での患者実習をしていただくこととなりました.鈴木歯科〒442-0068愛知県豊川市諏訪2ー277すずくにはる 近年,超高齢社会となり,顎堤の吸収が著しい患者さんが増えてきている中,大学で学んだことだけでは,患者さんの口腔機能を回復して満足してもらえる義歯をつくることは難しくなってきています. 大学では,顎堤がしっかりと残った模型を使い,歯槽頂間線の法則を用いて人工歯を排列すると教えられてきました.しかし,上下の顎堤吸収のバランスが悪くなってから歯槽頂間線の法則を利用しようとすると,人工歯排列を交叉咬合排列にするか,上顎の義歯の維持を求めるために,内側に吸収した上顎の歯槽頂に合わせて人工歯を排列するしかなくなってしまいます.そのような義歯では舌房が狭くなってしまい,患者さんにとって邪魔な義歯になってしまいます. 加藤式デンチャースペース義歯理論では,歯牙の欠損部位を補うだけではなく,顎骨が吸収して失われた骨量を床で補い,頰筋,口輪筋,舌など周囲組織の機能力を維持安定に利用し,本来あるべき咬合高径を回復したうえで,天然歯が元あった位置に排列するため,歯槽頂間線の法則に則った義歯とは違加藤武彦先生との出会い現在の超高齢社会に対応できる総義歯治療とは――加藤式デンチャースペース義歯理論のすすめ

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