日本歯科評論9月号
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木きノの本もと喜よし史ふみ40 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.9(2022-9)造」が根管治療に及ぼす影響に意識が向かない状態で臨床の現場に出ている可能性があるからである. 筆者は日本歯内療法学会の専門医であるが,紹介された症例以外は,根管治療後の修復処置を自ら行っている.そこで,歯内療法専門医として自分の行った根管治療に対して責任を果たすには,長期にわたり良好な予後が予測できる治療を提供しなくてはならないと考え,以前より「根管治療」と「支台築造」の関係について調べ,また啓蒙となる講演などを行ってきた■).その結果,紹介された患者であっても依頼元の了解が得られた場合は,支台築造まで行っている. 歯科医師としての経験は35年を超えたが,比較的長く大学に所属していたため,診療所を開院してから現在で16年目になる.開業当初から自由診療の支台築造は,ファイバーポストを用いたレジンポストコアをスーパーボンド(サンメディカル社)で装着大阪大学大学院歯学研究科臨床教授医療法人豊永会きのもと歯科大阪府吹田市出口町28-1 ラガール豊津₁F〒564-0072 支台築造は根管治療が完了した歯に対して施される治療である.そして,根管治療の目的は根管内の壊死した歯髄や細菌などの感染源を除去して,根尖病変の治癒と発症を予防することにあり,根管の形成や洗浄,根管充塡などを清潔な環境で行うことが重要で,さまざまな条件をクリアすることで根管治療は良好な予後が得られると考えられている. 通常,根管治療の範囲は根管充塡までと考えられているが,根管充塡がされてあっても歯冠側から根尖への感染の漏洩(コロナルリーケージ)が生じることが研究室レベルで示されており■),支台築造を含めた歯冠修復が根管治療の予後に影響を及ぼすとの臨床報告も多く見られる■,■). 上記に「通常」と記載したのは,歯学教育において根管治療の「根管充塡」は歯内療法学にて,「支台築造」は歯科補綴学にて教育されているため,学ぶ側が別々の項目として捉えてしまい,「支台築Ⅰ.根管治療と支台築造の関係Ⅱ.支台築造の選択根管治療の視点からみた i-TFCシステムと臨床活用法

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