日本歯科評論2022年8月
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前まえ畑はた 香かおり図₁ 残存歯の状況.8020達成者の割合は51.2%と50%を超えている(文献■)より).いるのではないかと筆者は実感している.歯の欠損を長期放置した部分歯列欠損患者が,日常生活に支障をきたす症状が生じ,必要に迫られて初めて歯科を受診した時,その残存口腔諸組織は,咬合崩壊(二次性障害)だけではなく,咀嚼筋障害・顎関節障害(三次性障害)■, ■)が生じ,部分床義歯製作は困難を極める状況に陥っていることも珍しくない(図₂).歯科医療機関を受診する以前の部分歯列欠損患者が,歯の欠損を長期放置できた理由として,ナカエ歯科クリニック神奈川歯科大学大学院 顎咬合機能回復学分野 特任講師〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内895-1 Profile:2000年 神奈川歯科大学 卒業2004年 ナカエ歯科クリニック 副院長2006年 ナカエ歯科クリニック 院長 現在,わが国は,後期高齢者(75歳以上)数が前期高齢者(65〜74歳)数を上回る“重老齢社会”を迎え■, ■),80歳で20本以上の歯を有する“8020運動”達成者の割合は51.2%(75歳から84歳までの高齢者■人に■人)に達した■)(図₁).ところが,平均寿命の延伸に伴い増加した高齢者の中には,全身疾患に加え,ロコモティブシンドローム(運動器症候群)や認知機能低下が発症し,口腔機能や口腔衛生状態を維持することが難しい者も少なくはない.そして,2020年から発生した新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で,歯科医療機関へ受診できないことが影響し,これら高齢者の中には口腔機能低下や口腔衛生状態の悪化が報告されている■, ■). 近年における高齢者の義歯治療は難症例が増加していると言われているが■, ■),コロナ禍になり,高齢者における部分床義歯の難症例がさらに増加して(%)100.090.080.070.060.050.040.030.020.010.00.040~442005年2011年45~4950~5455~5960~6465~692016年8020達成者:51.2%70~7475~7980~8485~(歳)日本歯科評論(通刊第958号) 113Ⅰ 部分床義歯における  難症例増加の背景 私の臨床 私の臨床Clinical Eyes暫間義歯を活用した部分床義歯の臨床─咬合平面を整え,レベルアップした嚙める義歯を作る!(₁)

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